配管損失のコラムアイキャッチ画像

全揚程とは、ポンプが実際に水を押し上げるのに必要なトータルの高さで、「実揚程(吸水面から吐出面までの垂直距離)+損失水頭(配管やホースの抵抗)」で求めます。カタログに記載された揚程はこの全揚程を指し、垂直距離だけで選ぶと配管抵抗に負けて水が出ないため、損失水頭を加えた全揚程での選定が必須です。

建設現場や工場での排水作業において、水中ポンプの選定は非常に重要なプロセスです。その際、最も基本でありながら、計算ミスや勘違いが起きやすいのが「揚程(ようてい)」の概念です。
「高低差の分だけ水を持ち上げられれば良い」と考えてポンプを選ぶと、いざ現場で稼働させたときに水量が著しく落ちてしまうというトラブルに見舞われるケースもあります。本記事では、ポンプ選定で失敗しないための基礎知識として、全揚程と実揚程の違い、そして損失水頭(配管損失)の正しい計算方法をわかりやすく解説します。

✔︎この記事のポイント

  • ポンプ選定の要となる「全揚程」と「実揚程」の明確な違いがわかる。
  • 配管の長さや材質による「配管損失」の仕組みと重要性を理解できる。
  • 現場で失敗しないための、正しい揚程計算のステップを習得できる。
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さくゾウ

「現場でポンプを設置したけれど、思ったより水が出ないゾウ…。カタログの揚程は足りているはずなのに、何が原因なの?」

さくみ

「それは『損失水頭』を計算に含めていないからかも!高さだけでなく、ホースや配管の抵抗も考慮して『全揚程』を求める必要があるんだゾウ。一緒に詳しく見ていこう!」
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Contents
  1. 【基礎】揚程の基本「全揚程」と「実揚程」の違い
    1. 実揚程とは?(吸込・吐出しの高さ)
    2. 全揚程とは?(実揚程+損失水頭(配管損失))
    3. 全揚程が足りないとどうなるか
  2. 【基礎】イメージで解説!『全揚程=実揚程+損失水頭(配管損失)』の公式
    1. ① 実揚程(じつようてい)=「単純な高さ」
    2. ② 損失水頭(そんしつすいとう)=「邪魔もの・通りにくさ」
    3. ③ 全揚程(ぜんようてい)=「実際に必要な体力」
  3. 【基礎】損失水頭(配管損失)が発生する仕組み
    1. なぜ配管の中でエネルギーが失われるのか
    2. 損失水頭(配管損失)が大きくなる要素
    3. バルブや継手による抵抗(局部損失)
  4. 【実践編】鋳鉄管の損失水頭(配管損失)を求める『ダルシー・ワイズバッハ式』
    1. 一般的な鋳鉄管なら「ダルシー・ワイズバッハ式」
    2. 【ダルシー・ワイズバッハ式損失水頭計算表を用いた損失水頭の計算】
  5. 【実践編】塩ビ管・ホースなどの損失水頭(配管損失)を求める『ヘーゼン・ウィリアムス式』
    1. 大口径や塩ビ管・ホースなら「ヘーゼン・ウィリアムス式」
    2. 管内面の粗さ係数(C値)の選び方
    3. 【ヘーゼン・ウィリアムス式を用いた損失水頭の計算】
  6. よくある質問
    1. ポンプの揚程とは何ですか?
    2. 損失水頭とは何ですか?
    3. 実揚程と全揚程の違いは何ですか?
  7. まとめ:たかが配管、されど配管。計算こそが現場を救う

【基礎】揚程の基本「全揚程」と「実揚程」の違い

揚程(ようてい)とは、ポンプが水を押し上げる能力を示す指標です。
揚程には「実揚程」と「全揚程」の2種類があり、ポンプ選定では配管の抵抗を含めた「全揚程」を基準にする必要があります。

  • 実揚程: 実際に水を持ち上げる垂直方向の高さ(高低差)
  • 全揚程: 実揚程に、配管やホースの摩擦による抵抗(損失水頭・配管損失)を加えた高さ

実揚程とは?(吸込・吐出しの高さ)

実揚程とは、シンプルに表現すると「実際に水を持ち上げる垂直方向の高さ(高低差)」のことです。
水中ポンプの場合、水面から水を吐き出す最終地点までの垂直距離を指します。横方向にどれだけ配管を伸ばしたとしても、横移動の距離は実揚程には含まれません。つまり、目に見える物理的な高低差そのものが実揚程となります。

全揚程とは?(実揚程+損失水頭(配管損失))

一方、ポンプのカタログスペックなどで示される「揚程」は、一般的に「全揚程」を意味します。全揚程とは、実揚程に「損失水頭(配管損失)」を加えた数値です。
計算式で表すと以下のようになります。

全揚程 = 実揚程 + 損失水頭(配管損失)

水が配管やホースの中を流れるとき、管の壁面との摩擦や、曲がり角、バルブの通過などで必ず抵抗(エネルギーの損失)が発生します。この抵抗に打ち勝って水を目標地点まで届けるためには、実揚程(高低差)以上のパワーが必要になります。この「余分に必要なパワー」を高さ(m)に換算したものが損失水頭(配管損失)であり、ポンプ選定において最も重要な要素なのです。

揚程イメージ図

💡 「損失水頭」と「配管損失」って何が違うの?

記事内に登場する2つの言葉ですが、指している意味(配管内で発生する抵抗・エネルギーのロス)は全く同じです。違いはずばり「単位」にあります。

  • 配管損失: 圧力の単位である「Pa(パスカル)」などを使用する。
  • 損失水頭: 高さの単位である「m(メートル)」を使用する。

本記事の解説文では、「損失水頭(配管損失)」と併記しています。
しかし、ポンプの能力(揚程)は「高さ(m)」で計算する必要があり、計算式において圧力の単位を用いる「配管損失」という表現は厳密には不適切となります。
そのため、ここから先の【実践編】の計算パートでは、単位の正確性を期すため「m(メートル)」で算出する『損失水頭』という言葉に統一して解説していきます!

全揚程が足りないとどうなるか

もし損失水頭を考慮せず、実揚程だけでギリギリのポンプを選んでしまった場合、現場ではどのようなことが起きるのでしょうか。
一番の症状は「著しく性能が落ちる(予定していた水量が出ない)」ことです。全揚程が不足していると、ポンプは一生懸命水を押し出そうとしているのに、配管の抵抗に負けてしまい、吐出口からはチョロチョロとしか水が出ないといった事態に陥ります。

このような状態で運転を続けると、現場の排水作業が予定通り進まないばかりか、過度な負荷や効率の悪い運転によってポンプ自体の寿命を縮めてしまう原因にもなります。だからこそ、現場環境に合わせた正確な全揚程の算出が不可欠なのです。

計算した全揚程が、一般的な工事用ポンプの揚程(おおむね8m〜20m前後)を超える現場では、高い場所へ水を送ることに特化した高揚程ポンプを選びます。櫻川ポンプでは、全揚程200mまでそろえたU超高揚程シリーズと、2ステージ構造で同じ出力のポンプの約2倍の揚程を出せるU-W2ステージシリーズをご用意しています。

関連記事:水中ポンプ選び方のポイント|メーカー解説!能力計算から用途別の選び方まで【2026】

関連記事:水中ポンプとは|選び方6ステップと使い方を日本初の専業メーカーが図解

【基礎】イメージで解説!『全揚程=実揚程+損失水頭(配管損失)』の公式

さくゾウ

さくゾウ

「損失水頭が配管の中で発生する『抵抗』ってのは分かったけど…。
それを『高さ(メートル)』に足すってどういうこと? 実体のないものを高さにするって、分かるような分からないような…。」

さくみ

「それなら、ポンプを『人間(あなた)』に置き換えて考えてみて!
階段を登る時の『体力』で考えると分かりやすいわよ。」
さくみ

① 実揚程(じつようてい)=「単純な高さ」

あなたは今、1階から5階まで水を運ぼうとしています。
これは、「1階から5階までの垂直距離(高さ)」のことです。
実揚程イメージ図

② 損失水頭(そんしつすいとう)=「邪魔もの・通りにくさ」

しかし、実際にはスムーズに登れるとは限りません。以下のような「邪魔」が入ります。

  • 階段が狭くて壁に体が擦れる(=配管が細い、管の摩擦)
  • 踊り場で何度も曲がらないといけない(=配管の曲がり角・エルボ)
  • 途中に重いドアがあって開けるのに力がいる(=バルブや弁の抵抗)

これらは高さではありませんが、余分な体力を使いますよね?
この「邪魔な要素を乗り越えるために必要な余分なエネルギー」を、高さ(メートル)に換算したものが「損失水頭」です。

③ 全揚程(ぜんようてい)=「実際に必要な体力」

これが、ポンプ(あなた)が発揮しなければならないトータルの能力です。
単に15メートル分の力(実揚程)だけで登ろうとすると、途中の「壁の摩擦」や「重いドア(損失)」に体力を奪われてしまい、5階にたどり着く前に力尽きてしまいます。

だから、ポンプを選ぶときはこう考えます。

「高さ15m(実揚程)+ 邪魔される分3m(損失)
= 合計18m分(全揚程)のパワーを持つポンプを用意しよう!」

このように、「水を揚げたい高さ」に「邪魔される分」を上乗せして選ぶのが、失敗しないポンプ選定の極意なのです。

【基礎】損失水頭(配管損失)が発生する仕組み

全揚程を計算する上で避けて通れないのが先ほども登場した「損失水頭(配管損失)」です。
では、そもそもなぜ水を通すだけで揚程(エネルギー)が失われてしまうのでしょうか。ここでは、その仕組みと損失を大きくしてしまう要素について解説します。

なぜ配管の中でエネルギーが失われるのか

水が配管やホースの中を移動するとき、内壁と水との間に必ず「摩擦」が生じます。両手をこすり合わせると抵抗を感じるのと同じように、水も管の壁面とこすれ合うことで前に進むためのエネルギーを消耗してしまうのです。

この摩擦によって失われるエネルギーの分だけ、ポンプは余分な力で水を押し出さなければなりません。単に水を高い場所へ持ち上げるだけでなく、この「摩擦抵抗に打ち勝つための力」を確保することが、損失水頭(配管損失)を計算する最大の理由です。

損失水頭(配管損失)が大きくなる要素

損失水頭の大きさは、現場のセッティング状況によって劇的に変化します。主に以下の3つの要素が損失に大きく影響します。

    • 管の長さ:
      水を送る距離が長くなるほど、水が壁面とこすれ合う距離も長くなるため、比例して損失は大きくなります。横引きの距離が長い現場では特に注意が必要です。

配管長さ

    • 管の太さ(内径):
      細い配管に大量の水を流そうとすると、水が流れるスピード(管内流速)が速くなります。水流が速くなると壁面との摩擦抵抗は急激に増大するため、損失を抑えるには「できるだけ太い配管やホースを選ぶこと」が基本となります。

配管狭さ

    • 管の材質(内面の粗さ):
      管の内側がザラザラしているほど、抵抗は大きくなります。例えば、表面が滑らかな塩ビ管やゴムホースは水がスムーズに流れますが、内部が腐食した古い鋳鉄管などは摩擦抵抗が大きくなります。

バルブや継手による抵抗(局部損失)

直管(まっすぐな配管)の摩擦だけでなく、配管の「形状変化」も損失の大きな原因となります。

現場では、配管を90度に曲げる「エルボ継手」を使用したり、水量を調節する「バルブ」を設置したりすることがあります。水がこれらの曲がり角や狭い部分を通過する際、水流が乱れて渦が発生し、そこで余分なエネルギーを消費してしまいます。これを「局部損失」と呼びます。

一つひとつの継手の抵抗は小さくても、ホースが極端に折れ曲がっていたり、複雑な配管ルートを組んでいたりすると、全体の損失水頭は無視できない数値に膨れ上がります。

【実践編】鋳鉄管の損失水頭(配管損失)を求める『ダルシー・ワイズバッハ式』

を算出するには、非常に複雑な計算をしなければなりません。
実際の建設現場や設備設計においては、より簡単に計算できる『ダルシー・ワイズバッハ式』『ヘーゼン・ウィリアムス式』が広く用いられています。

重要なのは、「配管の材質」と「口径」によって、どちらの計算式を使うべきかが厳密に決まっているという点です。この使い分けを間違えると、算出される全揚程に大きなズレが生じるため注意が必要です。

一般的な鋳鉄管なら「ダルシー・ワイズバッハ式」

現場で標準的に用いられる計算式の一つが「ダルシー・ワイズバッハ式」です。(業界的には”ダーシ式”ともいうことがあります。)
この公式は、以下の条件を両方満たす場合にのみ適用されます。

  • 管径: 50mm〜500mmの範囲内であること。かつ、 材質: 鋳鉄管であること。

【ダルシー・ワイズバッハ式の計算公式】

hf(損失水頭) = λ × ℓD×V²2g

[摩擦係数 λ = 0.02 + 0.0005D]

  • ℓ: 直管長さ(m)
  • D: 管内径(m)
  • V: 管内流速(m/s)
  • g: 重力加速度 9.8107(m/s²)

ダルシー・ワイズバッハ式は材質が「鋳鉄管」に限定されているため、メーカーのカタログや技術資料にはあらかじめ計算済みの「損失水頭計算表」が用意されていることがほとんどです。そのため、現場で複雑な手計算をしなくても、「配管の長さ」と「目標とする吐出し量(水量)」さえ分かれば、表から簡単に損失水頭を読み取ることができるというメリットがあります。
次の表が櫻川ポンプで使用している「損失水頭計算表」です。

損失水頭の計算表

【ダルシー・ワイズバッハ式損失水頭計算表を用いた損失水頭の計算】

では実際に、ダルシー・ワイズバッハ式の表を用いてポンプを選定してみましょう。
現場条件は、実揚程8m、横引き30m、吐出量1.2㎥/min、配管径が100㎜のSGP配管で自動運転ができるポンプを選定します。

例題イメージ図

さくゾウ

さくゾウ

「配管はSGPを使っていて、しかも口径が100㎜!
ダルシー・ワイズバッハ式の計算表が使えるケースだ!」

さくみ

「そうだゾウ!じゃまずは、表から該当箇所を探そう!」
さくみ

ダーシ式問題の該当箇所

さくゾウ

さくゾウ

「見つけた!0.04391 × ℓQ² の式を使えばいいんだね?」

さくみ

「大正解!あとはℓ=配管長さと、Q=吐出量を代入して計算するだけだよ!」
さくみ

hf(損失水頭)= 0.04391 × ℓQ²

  • 配管長さ ℓ: 8 + 30 = 38(m)
  • 吐出量 Q: 1.2(㎥/min)

損失水頭(m)=0.04391 × 38 × 1.2²=2.4027552≒2.4(m)

全揚程(m)=実揚程+損失水頭=8+2.4=10.4m

全揚程10.4m、吐出量1.2㎥/min、口径100㎜にあてはまるポンプは………\RAU-284A/

RAU 性能曲線

▶ 「この例と似た現場だ」という方は、現場条件を送るだけで無料の機種提案を受けられます(計算はこちらで行います)。

【実践編】塩ビ管・ホースなどの損失水頭(配管損失)を求める『ヘーゼン・ウィリアムス式』

大口径や塩ビ管・ホースなら「ヘーゼン・ウィリアムス式」

ダルシー・ワイズバッハ式の条件から外れる場合には「ヘーゼン・ウィリアムス式」を使用します。具体的には以下の条件のどちらかに当てはまる場合です。

  • 管径: 500mmより大きい大口径の配管。または、 材質: 鋳鉄管とそれ以外の材質(塩ビ管、ゴムホース、エタニット管など)

【ヘーゼン・ウィリアムス式】

hf(損失水頭)= λ × ℓD × V²2g

[摩擦係数 λ =133.6C1.85 × V0.15 × D1/6]

  • ℓ: 配管長さ(m)
  • D: 配管径(m)
  • V: 管内流速(m/s)
  • g: 重力加速度 9.8107(m/s²)
  • C: 管内面の粗さ係数

土木工事などの仮設現場では、取り回しの良いホースや塩ビ管を使用するケースが圧倒的に多いため、実務においてはこのヘーゼン・ウィリアムス公式の出番が多くなります。

管内面の粗さ係数(C値)の選び方

ヘーゼン・ウィリアムス式を計算する上で鍵となるのが、「管内面の粗さ係数(C値)」です。これは配管の内側の滑らかさを表す数値で、数字が大きいほど管の内部が滑らかで水が流れやすく(損失が少なく)、小さいほど粗い(損失が大きい)ことを意味します。

主な材質と状態によるC値の目安は以下の通りです。

配管の材質・状態 C値の目安 特徴
大口径管・黄銅管・引抜銅管 150〜140 非常に内面が滑らかで抵抗が極めて少ない状態。
エタニット管・ゴムホース・塩ビ管 140〜130 表面が滑らかで抵抗が少ない。仮設現場で多用される。
新鋳鉄管・新銅管・ヒューム管 130〜120 新品状態の標準的な金属管など。
古鋳鉄管・古銅管(約20年使用) 100 経年劣化により内面が荒れ、抵抗が増加している状態。
錆こぶがある古鋳鉄管・古銅管 90〜60 内部の腐食が進行し、こぶ状の盛り上がり(錆こぶ)が水流を著しく妨げている状態。

このように、同じ太さ・長さの配管であっても、新品の塩ビ管(C値:130)と、錆こぶだらけの古い鉄管(C値:60)とでは、発生する損失水頭に雲泥の差が出ます。「以前使った時と同じポンプだから大丈夫だろう」と古い配管を使い回すと、C値の低下によって思わぬ揚程不足を招くことになります。

【ヘーゼン・ウィリアムス式を用いた損失水頭の計算】

それでは、実際の河川工事の事例をもとに、ヘーゼン・ウィリアムス式を使ってポンプを選定しましょう。

この現場では、工事区域に水が入らないようポンプを使って、工事区域の先に水を移送しています。
条件は以下の通りです。

  • 使用配管と距離: サニーホースを使用して40m先に送水したい
  • 実揚程: 2m
  • 吐出量: 8.22㎥/min

【現場のイメージ図】
現場のイメージ図

【実際の現場写真】
現場写真
※水中ポンプはレンタル品とします。

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さくゾウ

「サニーホースを使っているから、ヘーゼン・ウィリアムス式を使うんだね!」

さくみ

「その通り!一緒に計算して、適切なポンプを選ぶゾウ!」
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計算前の確認事項は以下の通りです。
現時点では重力加速度しか分からないので、計算に必要な値を1つずつ確認していきましょう。

【ヘーゼン・ウィリアムス式】

hf(損失水頭)= λ × ℓD × V²2g

[摩擦係数 λ =133.6C1.85 × V0.15 × D1/6]

  • ℓ: 配管長さ(m)
  • D: 配管径(m)
  • V: 管内流速(m/s)
  • g: 重力加速度 9.8107(m/s²)
  • C: 管内面の粗さ係数
  • 配管長さ(ℓ)の設定:
    40mのサニーホースを使用していますが、余裕をとって配管長さは80mとします。
    写真から分かるようにホースの折れ曲がりがあり、抵抗が発生すると想定されます。また、現場の状況から水量が多くなるかも…ポンプはレンタル品で新品と同じ性能は出ないかも…など他の要因も考慮して倍で配管長さを設定しています。

    💡 配管の長さには「余裕値」を持たせよう!

    実揚程や配管径は正確な数値が決まっていることが多いですが、実は「配管の長さ」はおおよその目安で算出されているケースが少なくありません。これには以下のような理由があります。

    • ポンプ設置場所から排水先までの「直線距離」だけでざっくり計算されている
    • 途中の障害物を避けるための迂回や、細かな高低差が加味されていない
    • エルボなどの管継手(曲がり角)を通過する分の抵抗が考慮されていない

    いざ現場で配管を這わせると、「想定より摩擦抵抗が増えた!」という事態になりがちです。より確実で安全なポンプ選定を行うために、現場の状況に合わせて配管長さが数百メートルの時には5%程度を、数十メートルの時には10~20%程度の「余裕値」を加算して計算することをおすすめします。

  • 配管径(D)の選定:
    移送させる水の量が多いため、細いホースでは流速が速くなりすぎて損失が膨大になります。適切な流速に収まるよう、十分な太さのホースを選定します。
    選定には以下の表を目安に口径を決めます。この表は大体このくらいの水量ならこの口径という目安を示したものです。
    口径と吐出
    ※吐出水量はあくまで目安です。

この表を見ると余裕を見て口径250㎜より300㎜が適当のように見えます。ですが現場は河川で泥の混入が想定されます。泥が混入した水で使用した時、口径が大きく管内の流速が遅いとホース内に泥が堆積し、詰まりの原因になる可能性があります。

そこで次の限界沈殿速度を示したグラフも参考にします。
これは、配管内に土砂が溜まらないようにするために必要な流速の最低ラインを示すものです。

土砂沈殿限界速度

今回の場合、泥を想定していますので、口径が250㎜でも300㎜の場合でも管内流速は最低2.0m/s欲しいです。

流量が8.22㎥/minの時、V(管内流速)=流量管内面積で計算すると

口径250㎜では、管内流速は2.64m/s(※計算方法は後述のステップ①を参照)
口径300㎜では、0.58m/sとなります。

300㎜のホースでは泥が沈殿してしまうので、今回は口径250mmのサニーホースを使用します。
※損失水頭の計算では、呼び径やサイズではなく内径を使用するため、以降は250㎜サニーホースの内径である257㎜を配管径(D)とします。

  • 管内の粗さ係数(C)の設定:
    使用するのは内面が滑らかなホースであるため、この表よりC値を「130」に設定します。

実際に計算してみましょう!

ヘーゼン・ウィリアムス式より、損失水頭hfは以下の式で示されます。

hf(損失水頭) = λ × ℓD × V²2g

[摩擦係数 λ =133.6C1.85 × V0.15 × D1/6]

  • ℓ: 配管長さ(m)= 80m
  • D: 配管径(m)=0.257m(257㎜)
  • V: 管内流速(m/S)
  • g: 重力加速度 9.807(m/s²)
  • C: 管内面の粗さ係数=130
  • π: 円周率 3.1416(m/s²)

これらの値を使って、まだ判明していない管内流速・摩擦係数を計算して、全揚程を求めましょう!

ステップ① V:管内流速の計算

V(管内流速) = 流量管内面積
= Q(㎥/min)60 × 管内面積 (※流量の単位をm/sに揃えるため60で割る)
= Q60 × π(D2)²
= 8.2260 × 3.1416(0.2572)²
= 8.22 × 13.1124
= 2.64m/s (V)

ステップ② λ:摩擦係数の計算

λ(摩擦係数) = 133.6C1.85 × V0.15 × D1/6
= 133.61301.85 × 2.640.15 × 0.2571/6
= 0.01779 (λ)

ステップ③ 損失水頭の計算

hf(損失水頭) = λ × ℓD × V²2g
= 0.01779 × 800.257 × 2.64²2 × 9.807
= 0.01779 × 311 × 0.355
≒ 1.96m (損失水頭)

ステップ④ 全揚程の計算

全揚程 = 実揚程 + 損失水頭
= 2.0 + 1.96
= 3.96m ≒ 4.0m
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さくゾウ

「分かった!全揚程が4.0m、吐出量が8.220㎥/min以上のポンプを選べばいいんだ!」

さくみ

「大正解だゾウ!あとはカタログを参考に合う性能を探すだけ!今回はU-43010Bが選定されたゾウ。」
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▶ 総合カタログを見る(無料)

 

Uの性能曲線

 

▶ サニーホース・塩ビ管の現場条件をお送りいただければ、損失水頭の計算から機種選定まで無料で行います。お問い合わせフォームはこちら。

「計算が難しい!」「全揚程の計算が複雑に感じる!」
そんな場合や、計算結果の妥当性を確認したい場合は、櫻川ポンプ製作所の「ポンプ簡易選定ページ」をご活用ください!

配管口径・配管長さ・吐出し量・揚程の4項目を入力するだけで、条件に合った最適なポンプが自動で表示されます。手計算の結果と照らし合わせることで、選定ミスを防ぐダブルチェックとしても有効です。

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よくある質問

ポンプの揚程とは何ですか?

揚程(ようてい)とは、ポンプが水を押し上げる能力を高さ(m)で表した指標です。カタログに書かれた揚程は、配管の抵抗を含めた「全揚程」を指します。

損失水頭とは何ですか?

損失水頭とは、配管やホースの摩擦、曲がり角、バルブを水が通るときに失われるエネルギーを、高さ(m)に換算したものです。配管が細いほど、配管の曲がり角やエルボが多いほど大きくなります。

実揚程と全揚程の違いは何ですか?

実揚程は、吸水面から吐出し先までの垂直の高さです。全揚程は、実揚程に損失水頭を足した高さで、ポンプはこの全揚程で選びます。実揚程が2mの現場でも、配管の条件によっては約4mの全揚程が必要になります。

まとめ:たかが配管、されど配管。計算こそが現場を救う

今回は、水中ポンプの選定で失敗しないための「全揚程」と「損失水頭」について、実際の河川工事の事例を交えて解説しました。

計算結果を見て驚かれた方も多いのではないでしょうか。「実揚程(高低差)はわずか2m」の現場でも、配管の長さや流量を考慮して正しく計算すると、実際にはその倍となる「約4mの全揚程」が必要になるのです。
もしこの計算を怠り、見た目の高さだけでポンプを選んでいたら、現場では「水が出ない」というトラブルが発生し、工事がストップしていたかもしれません。

✔︎本記事の重要ポイント

  • 全揚程 = 実揚程 + 配管損失:見た目の高さだけで選ばず、必ず損失を足し合わせる。
  • 公式の活用:条件に合わせて「ダーシ式」や「ハザン・ウィリアム式」などを使い、数値を可視化する。
  • 安全率の考慮:計算時は配管長さに余裕を持たせるなど、リスクを見込んだ選定を行う。

現場の状況は千差万別であり、配管損失の計算に迷うことも少なくありません。もし「自分の現場にはどのポンプが最適なのか」「このホースの太さで水は足りるのか」と悩まれた際は、ぜひ私たち櫻川ポンプ製作所にご相談ください。長年の現場知見に基づき、過酷な環境でも「頑丈で長持ち」する最適な一台をご提案いたします。

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この記事を書いた人

株式会社櫻川ポンプ製作所

株式会社 櫻川ポンプ製作所 編集部

昭和30年設立。水中ポンプのパイオニアとして「Hydro-Techno Solution」を掲げ、流体技術による社会課題の解決に取り組んでいます。 ISO9001/14001認証取得企業として、確かな技術と経験に基づいた情報を発信します。

※正確で分かりやすい情報発信のため、社内知見を基に生成AIを活用して草案を作成し、専門家が監修しています。

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