「水中ポンプって、そもそもどうやって水を吸い上げているの?」「水の中で電気を使って、なぜ感電したり故障したりしないの?」
建設現場や工場、あるいは冠水対策などで欠かせない水中ポンプですが、その内部構造や仕組みを詳しく知る機会は少ないかもしれません。実は、水中ポンプが過酷な環境でも動き続けられる背景には、緻密に設計された「水の制御」と「保護の仕組み」があります。
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さくみ
この記事では、水中ポンプの基本的な原理から、櫻川ポンプが長年培ってきた「壊れにくい工夫」まで、文系の方でも分かるように解説します。仕組みを理解することで、現場での適切なメンテナンスや、最適なポンプ選びができるようになりますよ。
✔︎この記事のポイント
- 水中ポンプは「遠心力」を使って水を押し出す仕組み
- 水切り加工やメカニカルシールが「浸水」を物理的にブロックしている
- 「冷却構造」や「保護機能」の違いがポンプの寿命を左右する
文系でもわかる!水中ポンプが水を汲み上げる仕組み
水中ポンプを一口で言うと、「水の中でモータを回し、その力で水を外へ放り出す機械」です。なぜ沈めているだけで水が上がってくるのか、その秘密は「遠心力」にあります。
原理はシンプル!遠心力で水を飛ばす仕組み
水中ポンプの内部には、「インペラ(羽根車)」と呼ばれる回転体が入っています。モータが回転するとこのインペラが高速で回り、中にある水を外側へと弾き飛ばします。これは、バケツに手を入れてぐるぐるかき回すと、水が縁の方に盛り上がるのと同じ「遠心力」の原理です。

外側に飛ばされた水は、ポンプの壁(ケーシング)に沿って集められ、出口へと押し出されます。水が外へ出た分、ポンプの中は一瞬だけ圧力が下がり、そこへ外の新しい水が吸い込まれてくる……。この連続した動きによって、途切れることなく水を汲み上げることができるのです。
性能の鍵!インペラとケーシングの隙間
水中ポンプの性能(どれくらい高く、どれくらい大量に水を送れるか)を左右するのが、回転する「インペラ」と、それを覆う「ケーシング」の間のわずかな隙間(クリアランス)です。この隙間の設計によって、ポンプの性格が大きく変わります。

| 隙間の特徴 | メリット | デメリット | 代表シリーズ |
|---|---|---|---|
| 隙間が広い (渦流タイプなど) |
・大きなゴミが詰まりにくい ・水量を多く流せる |
・高い場所へ揚げる力が弱い ・ポンプ全体の効率が落ちる |
USシリーズ |
| 隙間が狭い | ・高い場所まで水を押し上げられる ・エネルギー効率が良い |
・異物が詰まりやすい ・メンテナンス時の調整がシビア |
U-Kシリーズ |
櫻川ポンプでは、お客様の使用環境や要求されるスペックに合わせて、最適な設計を選択しています。特に、製造工程ではこのクリアランスを一台ずつ手作業で調整しており、設計通りの性能が現場で100%発揮されるよう徹底しています。単に組み立てるだけでなく、「分解のしやすさ」まで考慮して設計されているのも、長く使っていただくためのこだわりです。
なぜ感電しない?水中ポンプの密閉構造と仕組み
「水の中に電気製品を入れて大丈夫なの?」と不安に思う方もいるかもしれませんが、水中ポンプには浸水を物理的にシャットアウトする重厚なバリアが何層も備わっています。ただ密閉するだけでなく、水圧にも耐える独自の工夫を見ていきましょう。
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浸水を防ぐ「メカニカルシール」と「オイルシール」の仕組み
水中ポンプの中で最も浸水が発生する恐れがあるのが、回転するシャフト(軸)の隙間です。ここを完全に塞がないとモータに水が入ってしまいますが、ガチガチに固めると軸が回らなくなります。この「回転」と「密閉」という矛盾する課題を解決するために、二段構えのシール構造が採用されています。
第一の防波堤:オイルシール
最も外側(インペラ側)に配置されているのが「オイルシール」です。これは、泥水に含まれる微細な砂やゴミが、後方の精密なメカニカルシール室へ侵入するのを防ぐ役割を担っています。

さらにオイルシールには、「外部からの浸水を防ぐ」と同時に「メカニカルシール室内の潤滑油が外へ漏れ出すのを防ぐ」という双方向の遮断機能があります。このオイルシールが健全であることで、内部の潤滑環境が保たれています。
最後の砦:メカニカルシール
オイルシールのさらに奥に控えるのが「メカニカルシール」です。非常に平らな面を持つ2つのリング(固定環と回転環)をバネの力で押し当て、その隙間に潤滑油(オイル)の膜を作ることで、モータ室への浸水を物理的に遮断します。
- 潤滑と冷却:オイルが摩擦熱を逃がし、シール面の焼き付きを防ぎます。
- シールの補強:オイルの膜が壁となり、浸水を徹底的にブロックします。

圧力を逃がす「背圧抜き構造」の仕組み
どれだけ優れたメカニカルシールでも、常に強い背圧がかかり続けると、そのトラブルのリスクが高まります。そこで櫻川ポンプが採用しているのが「背圧抜き構造」です。
そもそも「背圧(はいあつ)」とは?
ポンプが水を汲み上げる際、内部では非常に高い圧力が生まれます。このとき、インペラ(羽根車)の裏側(背中側)に回り込んで、メカニカルシールを押しつぶそうとする力のことを「背圧」と呼びます。

背圧抜きによる「浸水リスク」の回避
背圧がかかり続けると、その圧力に負けてメカニカルシールの摺動面(接地面)が浮き上がってしまうことがあります。一度面が浮いてしまえば、そこから一気に水が浸入してしまいます。背圧抜き構造は、インペラ背面の圧力を逃がす通り道を作ることで、この「面の浮き上がり」を物理的に防ぐ仕組みです。

櫻川ポンプでは、主に以下の高圧・過酷な現場用シリーズにこの構造を採用しています。
| 機種 | 使用される現場 | 該当シリーズ |
|---|---|---|
| サンドポンプ | 土砂が多く含まれる水を排水する現場 | HSシリーズ |
| 高揚程ポンプ | 高い場所へ水を押し上げる現場 | U-W2シリーズ U超高揚程シリーズ U高揚程大水量シリーズ |
| 大水量ポンプ | 大量の水を押し上げるパワーが必要な現場 | U大水量シリーズ |
この仕組みが、メカニカルシールの理論上の寿命(5,000〜6,000時間)をまっとうできるようにサポートし、水漏れ故障のリスクを最小限に抑えています。目立たない部分ですが、長寿命を実現するための重要な仕組みです。
ケーブルからの浸水を防ぐ「水切り加工」の仕組み
ここまではポンプ側(回転軸)からの浸水対策を見てきましたが、実はもう一つ、見落とせない浸水ルートがあります。それが「電線(ケーブル)」を伝ってモータへ水が入るケースです。
なぜケーブルから水が入るのか?
万が一、ケーブルが傷ついたり断線したりすると、以下の2つの現象によって水がモータ室へと吸い寄せられてしまいます。
| 浸水の原因 | 仕組み・メカニズム |
|---|---|
| 毛細管現象 | 導線の細かな隙間を、水が伝い吸い込まれていく現象です。 |
| 内部と外部の圧力差 | ポンプの運転(発熱)と停止(冷却)を繰り返すと、内部の空気が膨張・収縮して「呼吸」をするような圧力差が生じます。このとき発生する負圧によって、ケーブルの傷口から水が強力に引き込まれます。 |
基本の安心:水切り加工
こうした事態を防ぐため、水中ポンプでは「水切り加工」が施されています。これは導線の隙間を特殊な樹脂(アラルダイトなど)で物理的に埋める加工で、水中ポンプであれば備わっていて当然と言えるほど重要な基本仕様です。

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断線時でも水がモータへ到達するのを物理的にブロックし、致命的なショートや故障を防ぐ。櫻川ポンプでも、この基本的な加工を徹底することで、現場での「もしも」の事態に備えています。
部品の隙間を埋めるパッキンの役割と仕組み
ポンプのケースやカバーの継ぎ目には、専用のパッキンやOリングが配置されています。これらは単なるゴムの輪に見えますが、組み立て時に適切な強さで締め付けられることで、金属同士のわずかな隙間を埋め尽くします。櫻川ポンプでは「組み立てやすさ」と「確実な密閉」を両立した設計を行うことで、誰が整備しても高い安全性が保たれる仕組みを構築しています。
トラブル回避!故障を防ぐ水中ポンプの保護機能と仕組み
水中ポンプは過酷な現場で使用されるため、ときにはポンプにとって非常に苦しい状況で運転しなければならないことがあります。代表的なトラブルには、以下のようなものがあります。
| トラブルの種類 | 仕組み・原因 |
|---|---|
| 渇水運転 | 水がない状態で運転し続けることで、モータが周りの水で冷やされず、異常発熱を引き起こします。 |
| インペラロック | 石や木片などの異物がインペラに詰まり、回転が物理的に止まることで、モータに過剰な電流(過電流)が流れます。 |
| 単相拘束 | ケーブルの断線や接触不良により、三相のうち一相が切れた状態で電気を送ろうとし、回らないモータに過剰な電流が流れます。 |
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こうしたトラブルが発生しても、簡単に壊れないよう、水中ポンプには独自の冷却システムや保護装置が備わっています。いかにして安全に使用し続けられるかを追求した、櫻川ポンプの知恵が詰まった仕組みを詳しく解説します。
異物侵入を防ぐ「ストレーナ」の仕組み
ポンプの底にある網目状の部品が「ストレーナ」です。吸い込み口から大きな石やゴミが入るのを防ぐ、いわば「ろ過」の役割を果たします。ストレーナがあることで、内部のインペラが異物でロックしたり、ケーシング内が傷ついたりするトラブルを未然に防いでいます。

モータを冷やす「冷却構造」の仕組み
水中ポンプは、モータが発する熱を周りの水に逃がすことで冷却しています。しかし、水位が下がってポンプが露出してしまうと熱を逃がせなくなり、モータが焼き付いてしまいます。これを防ぐために、汲み上げている水そのものをモータの周囲に流して冷却する仕組みが重要になります。
代表的な3つの冷却構造
| 構造名 | 仕組みと特徴 | メリット | 代表シリーズ |
|---|---|---|---|
| 片水路 | モータの片側にだけ水路がある構造。 | シンプルで安価。 | USシリーズ HSシリーズ |
| 全面水路 | モータの周囲をぐるりと水が通る構造。 | 水位が低くても冷却でき、気中運転が可能。 | UCFシリーズ U-W2シリーズ |
| 冷却ドラム | モータを専用ドラムで包み、内部で水を循環。 | 櫻川独自構造。泥水や高負荷環境でも最強の冷却力。 | NHSシリーズ Fシリーズ |

モータ焼損を防ぐ保護装置「オートカット」と「MTP」
過負荷や異常発熱からモータを守るため、水中ポンプには「オートカット(AC)」または「ミニチュアサーマルプロテクタ(MTP)」のいずれか一方が装備されています。どちらもモータを保護する仕組みですが、動作原理や復帰方法が異なります。
1. オートカット(AC)の仕組み
ポンプのヘッドカバー部分に取り付けられる小型の保護装置です。
- 動作原理:過電流によるヒータの自己発熱や、モータの異常発熱によって内部の「バイメタル」が反り、接点を切り離して電流を直接遮断します。
- 検知内容:「温度上昇」と「過電流」の両方を検知します。
- 復帰方法:温度が下がるとバイメタルが元の形に戻り、自動的に再始動する「自動復帰型」です。

2. ミニチュアサーマルプロテクタ(MTP)の仕組み
主に大型ポンプに装備され、モータ内部のコイル(巻線)の中に直接埋め込まれている保護装置です。
- 動作原理:コイルの熱を直接感知し、内部のバイメタルが変形して接点が開きます。MTP自体にモータ電流を直接遮断する機能はないため、信号を制御盤へ送り、盤側の開閉器を落とすことでポンプを止めます。
- 検知内容:「モータの温度上昇」のみを検知します。
- 復帰方法:コイルの温度が下がるとMTPの接点は閉じますが、制御盤のスイッチを手動で復帰させない限り再始動しないため、安全性が高いのが特徴です。

致命的な故障を早期発見する「浸水検出器」の仕組み
メカニカルシールの摩耗や破損により、モータ室へ水が侵入するのを防ぐ「予報」の役割を果たすのが浸水検出器です。モータが焼損したり漏電したりする前に異常を知ることで、修理費用を抑え、現場のダウンタイムを最小限にできます。

電極式浸水検出器
電極とポンプ本体が「通電」することで浸水を検知します。水に含まれる不純物を利用して電気を流す仕組みです。
- メリット:非常にコンパクトで、小さなポンプにも取り付けやすい。
- デメリット:電極の絶縁が低下すると、浸水していなくても誤作動する可能性があります。
フロート式浸水検出器
浸水によって内部の水位が上がると、フロート(浮き)が浮き上がり、物理的なスイッチが入る形式です。大型ポンプでMTPとセットで装備されることが多いです。
- メリット:機械的な動作のため絶縁低下による誤作動が少なく、信頼性が極めて高い。
- デメリット:フロートが動くためのスペース(フロート室)が必要なため、大型ポンプに限定されます。
これらの検出器は単体でポンプを止めることはできません。信号を制御盤に送り、パトライトを点灯させるなどの仕組みと組み合わせて、いかにして安全に使用できるかを追求しています。
ポンプが溶ける腐食から守る仕組み
水中ポンプの天敵は「浸水」や「焼損」だけではありません。金属である以上、避けて通れないのが「腐食(サビ)」です。特に海水が混じる現場や化学工場などでは、放っておくとポンプが溶けてボロボロになってしまうこともあります。これを防ぐために、櫻川ポンプには「自らを犠牲にして本体を守る」仕組みが備わっています。
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なぜポンプが腐食する?「電蝕」の仕組み
ポンプが溶ける腐食の正体は、正式には「電蝕(電気化学的腐蝕)」と呼ばれます。これは、種類の異なる金属が水や海水などの「電解質溶液」に浸されたときに起こる現象です。
金属には、それぞれ水中で陽イオンになろうとする強さ(イオン化傾向)があり、これを「標準電極電位」と呼びます。異なる金属が並ぶと、この電位の差によって、イオン化傾向が強い金属から小さい金属へと電子が移動します。このとき、電子を失った金属原子が「イオン」として水の中に溶け出していくことで、金属が腐食してしまうのです。水中ポンプの主材料である「鉄」も、設置環境によってはこの反応が進み、少しずつ削り取られてしまいます。

アルミニウムが身代わりになる「犠牲陽極」
この電蝕による進行を抑えるために取り付けるのが「犠牲陽極(ぎせいようきょく)」です。鉄よりもさらに腐食しやすい(イオン化傾向が大きい)金属を取り付けることで、鉄の代わりにその金属が先に溶け出し、ポンプ本体の腐食を食い止める仕組みです。

櫻川ポンプのこだわり:アルミの犠牲陽極を標準搭載
犠牲陽極には亜鉛が使われることもありますが、櫻川ポンプでは「アルミニウム」を標準として採用しています。アルミニウムを犠牲陽極として使用することで、大切なポンプ本体を長持ちさせることが可能です。
- 標準搭載シリーズ:UCFシリーズ(ディープウェル)、U大水量シリーズなど。
- オプション対応:その他のシリーズでも、お客様の使用環境に合わせてオプションで取り付けが可能です。
主な活用現場
海水混じりの水を扱う養殖場や漁場、河川の河口付近、さらには腐食性の水を扱う工場や工事現場などでその真価を発揮します。犠牲陽極が溶けてなくなるまではポンプ本体の腐食は抑えられます。定期的にチェックし、必要に応じて「身代わり」を交換することが、ポンプを長寿命化させる秘訣です。
まとめ:仕組みを知れば、ポンプはもっと長く安全に使える
水中ポンプの仕組みは、単に水を汲み上げるだけでなく、「いかに浸水を防ぐか」「いかに効率よく冷やすか」「いかに最悪の故障を回避するか」という、安全への配慮の積み重ねでできています。
櫻川ポンプでは、インペラのクリアランス(隙間)を一台ずつ手作業で調整し、ひとつひとつのケーブルに水切り加工を施すなど、細かな仕組みに徹底的にこだわっています。この「見えない部分のこだわり」こそが、現場で信頼される耐久性の正体です。仕組みを正しく理解し、適切な点検を行うことで、水中ポンプはより長く、あなたの現場を支え続けてくれるはずです。



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