「現場で急に水中ポンプが必要になったけれど、どの機種を選べばいいかわからない…」
「もし選び方を間違えて、水が出なかったりすぐに故障したりしたらどうしよう…」
そんな不安をお持ちではありませんか?
水中ポンプの選び方は、現場の状況や排水する水質によって変わります。カタログのスペックだけを見て選んでしまうと、思わぬトラブルを招くことも少なくありません。
この記事では、ポンプメーカーの視点から、初心者でも失敗しない「水中ポンプの選び方」の手順をわかりやすく解説します。
基礎知識から能力の計算方法、用途別の選び方まで、これを読めば自信を持って最適な一台を選べるようになります。

水中ポンプの選び方で失敗しないための基礎知識
水中ポンプの選び方は、現場の安全と工期を守るための最初の重要なステップです。
「とりあえず水が出ればいい」と考えて適当なポンプを選んでしまうと、すぐに詰まって故障したり、最悪の場合は排水が追いつかずに現場が水没したりするリスクがあります。
ポンプメーカーとして言えることは、正しく選ぶためには、カタログのスペックを見る前に「現場の状況」を正確に把握することが何よりも大切だということです。
まずは、選び方の土台となる基礎的な確認事項から見ていきましょう。
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使用環境と排水種類の洗い出し
一番最初に確認すべきなのは、「液質(水の性質、水の中に何が混ざっているか)」です。
見た目は同じようなポンプでも、対応する液質が異なります。
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| 水質・種類 | 特徴 | 選ぶべきポンプのタイプ |
|---|---|---|
| 雨水・溜まり水 | 泥やゴミがほとんどない綺麗な水 | 一般工事排水ポンプ 残水ポンプ |
| 泥水・スラリー | 土砂、泥、砂利などが混じっている水 | 撹拌羽根付きポンプ サンドポンプ |
| 汚水・汚物 | し尿や便が混入している水 | 汚物用ポンプ(異物通過径が大きいもの) |
| 海水・薬液混じり | 腐食性のある液体 | 耐食ポンプ(ステンレス製) 耐海水ポンプ |
| 高温 | 40℃以上の高温水 | 耐高温ポンプ |
周波数・相数・電圧・口径の確認
水質が確認できたら、次は現場の設備環境との適合確認です。
ここで間違えると「現場に持っていったけれど電源に接続できない」「ポンプにホースや配管をつなげられない」など、初歩的ながら致命的なミスに繋がります。
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必ず確認すべき項目は、周波数、相数、電圧、口径です。
| 確認項目 | 詳細 |
|---|---|
| 周波数(Hz) | 東日本は50Hz、西日本は60Hzです。水中ポンプはモーター製品のため、周波数が異なると性能が出なかったり、故障の原因になったりします。 |
| 相数 | 家庭用コンセントで使える「単相」と、工場や工事現場の動力電源で使用する「三相」があります。 相数が異なるとプラグの形状や配線の本数が変わり、物理的に接続できません。 |
| 電圧(V) | 相数によって以下の電圧が存在します。 ・単相:「100V」または「200V」 ・三相:「200V」または「400V」(馬力が必要な大型ポンプは400Vが基本) ※同じ200Vでも、「単相200V」と「三相200V」は全くの別物です。間違えて接続しないよう、必ず相数とセットで確認してください。 |
| 口径(mm) | ポンプの吐出し口の大きさです。接続するホースや配管の太さと合わせる必要があります。 |
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水中ポンプ選び方の要「全揚程・吐出し量」計算
基礎知識の次は、ポンプの「能力」を選ぶステップです。
ここでキーワードとなるのが「全揚程(ぜんようてい)」と「吐出し量(はきだしりょう)」です。
この考え方や計算を間違えると、現場の要望を満たさないポンプを選んでしまいます。
特に「全揚程」の認識違いは、初歩的ですが間違えやすい項目の一つです。
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実揚程と全揚程の違い

実揚程とは、吸水面から吐出水面までの垂直距離のことです。ここで多くの人が陥りやすい間違いがあります。
「揚水したい高さ(実揚程)が8mだから、カタログに全揚程8mと書いてあるポンプを選べばいい」
もしそう考えて選んでしまうと、現場で「水が出ない」というトラブルに直結してしまいます。
なぜなら、カタログに記載されている「全揚程」とは「実揚程」に「配管損失(水がホースや配管の中を通る際に必ず発生する摩擦)」を足し合わせた、ポンプが実際に必要とするトータルの圧力(パワー)のことを指すからです。
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配管損失の簡易的な計算方法
配管損失を正確に出すには複雑な計算が必要ですが、現場では「見えない高さ」として簡易的に計算する目安があります。
損失は主に「ホースの長さ」と「ホースの太さ」で決まります。
| 要因 | 損失の傾向 |
|---|---|
| ホースの長さ | ホースが長ければ長いほど、摩擦が増えて損失(=必要な圧力)が大きくなります。 |
| ホースの太さ | ホースが細いほど、抵抗が急激に大きくなります。 逆に、ホースを太くすると損失は大幅に減ります。 |
あくまで概算ですが、一般的な土木工事で使われるサニーホースを使用する場合、以下の目安で「高さ(揚程)」をプラスして計算してください。
※口径50mm〜80mm程度のホースで標準的な水量を流す場合
『 ホース長さ10m につき、揚程 1m をプラスする 』
例:高さ(実揚程)が10mで、ホースを50m横引きする場合
実揚程 10m + 配管損失 5m(50m÷10) = 必要な全揚程 15m
※上記はあくまで安全側を見た目安です。ホースが極端に細い場合や、泥水でドロドロしている場合は、さらに大きな抵抗がかかるため、より能力の高いポンプを選ぶ必要があります。
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吐出し量とその求め方
吐出し量とは、「1分間にどれだけの量の水( m³/min または L/min )を排出できるか」を示す数値です。
1㎥/minであれば1分間に1㎥(=1,000L)の水を排出できます。
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例えば、1時間で6㎥(=6,000L)の水を排水したいときは0.1㎥/min排水できるポンプを選ぶといいよ。」

性能曲線(カーブ)の見方
全揚程と吐出し量の目安がついたら、いよいよ機種を選びます。
ここで使用するのが、各ポンプのカタログに必ず載っている性能曲線(カーブ)です。
性能曲線とは、「全揚程(縦軸)」と「吐出し量(横軸)」の関係性を示したグラフです。

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現場が求めている「全揚程」と「吐出し量」が、性能曲線の内側(下側)に収まっているかを確認します。
曲線よりも外側にある数値は、そのポンプでは実現不可能です。

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仕様点というのは、カタログに記載されている『そのポンプが一番効率よく運転できる全揚程と吐出し量の組み合わせ』のことなんだ。
この近くで運転することで、電気代も節約できるし、ポンプへの負担も一番少なくなるんだよ。」

用途・シーン別水中ポンプ選び方の基準

ここからは、これまで紹介した基礎知識や能力の計算方法を踏まえた上で、現場の状況に応じた具体的なポンプの選び方をご紹介します。
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建設現場で使用されるポンプの選び方
建設現場によって使用されるポンプは様々です。また、一つの現場で何種類ものポンプが使用されることもあります。
あくまで一例ですが、それぞれの現場でよく使われるポンプを紹介します。
| 現場 | 要望 | 選ぶべきポンプのタイプ |
|---|---|---|
| 建設工事 | 排水量が増えたり減ったりする 夜間作業で静かにする必要がある 電源の場所が遠く、入切が面倒 電気料金を抑えて、とポンプ寿命を延ばしたい |
オートポンプ |
| 建築工事 | フロアの残水を処理したい | 残水ポンプ |
| トンネル工事 | 立坑から排水したい トンネルの奥まで給水したい |
高揚程ポンプ |
| 河川工事 | 切り回し工事で河川の水を一気に運びたい | 大水量ポンプ |
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豪雨対策で使用されるポンプの選び方
ゲリラ豪雨や台風による増水、敷地内浸水を防ぐためには、あらかじめポンプを設置しておき、増水したら大量排水できるようにしておくことが重要です。
まず、排水速度を上げるためには「大水量ポンプ」の選び方が有効です。
そして、水が一定量増水したら自動で排水を開始する「大水量オートポンプ」なら常時監視の手間なく、効率的な浸水対策が可能になります。
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設備・農水産業で使用されるポンプの選び方
工場や処理施設、農水産業で恒久的に設置される場合は、耐久性のあるポンプや特定の環境に特化したポンプが選ばれます。
こちらもあくまで一例ですが、それぞれの現場でよく使われるポンプを紹介します。
| 現場 | 要望 | 選ぶべきポンプのタイプ |
|---|---|---|
| 工場設備 | 起動と停止を自動で行ってほしい 製造過程で出る高温水を排水したい 腐食性のある水を排水したい 引火性のある場所で使用したい |
2.3点式オートポンプ 耐高温ポンプ 耐食ポンプ 耐圧防爆ポンプ |
| 農業・水産業 | 灌漑用の給水をしたい 井戸の水を汲みたい 海水混じりの水を排水したい |
大水量ポンプ 清水ポンプ 耐海水ポンプ |
| 下水処理設備 | マンホールに設置して汚水をポンプアップしたい | 汚水ポンプ |
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レンタルか購入か?コスト比較の視点
ポンプを導入する際、レンタルと購入のどちらが良いか迷うことがあります。
| 導入方法 | メリット | デメリット | 対応範囲 |
|---|---|---|---|
| レンタル | 初期費用が安い。メンテナンス不要。 | 長期間使うと割高になる。 | 数日〜数ヶ月の短期工事、緊急の災害対応 |
| 購入 | 長期間使うほどトータルコストは安い。資産になる。 | 初期費用が高い。保管場所とメンテナンス(修理)が必要。 | 工場の恒久設備、年間通して頻繁に利用する現場 |
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一時的な工事や、年に数回の豪雨対策であればレンタルが効率的です。一方で、工場設備や、年間を通して常に排水作業が発生する現場であれば、購入した方がコストメリットは大きくなります。
水中ポンプ選び方まとめ
水中ポンプの選び方ミスを防ぎ、スムーズに手配するために、以下の情報を必ず確認するようにしてください。
1. 液質:何を排水したいか?(雨水、泥水、海水混じりなど)
2. 電源:現場の電源は?(単相100V or 三相200V、周波数 50Hz or 60Hz)
3. 口径:使用するホースの太さは?(50mm, 80mm など)
4. 能力:どれくらいの高さに、どれくらいの量を出したいか?(全揚程と吐出し量)
5. 用途:どのような使い方をしたいか?(残水処理、自動運転など)
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